子供の英語教育をいつ始めるべきか、悩んでいませんか?
「早い方が良い」とする意見もあれば、「焦らなくて良い」という考えもあり、判断が難しいものです。
この記事では、脳科学、習い事、教育者の3つの観点から、子供の英語教育を始める最適な時期について詳しく解説します。
脳科学から考える|子供の英語はいつから始める?
言語の習得には、脳の認知能力の発達が大きく関係しています。
そこで、脳科学の観点から、子供の英語教育を始める最適な時期を考えてみましょう。
脳科学的には英語習得は「何歳からでも可能」
言語脳科学の研究によると、言語習得能力に年齢による制限はありません。
つまり、脳科学的に見ればどの年齢からでも英語を習得できるのです。
1970年代〜1980年代の第二言語習得研究では、「Older is faster, younger is better.(年齢を重ねた方が速く習得できるが、幼少期から始めた方がより上手になる)」という考え方が提唱されました。
これは、成長して認知能力が高まった方が、幼少期よりも早く言語を習得できることを示しています。
言語習得における脳の働きだけを見れば、生まれたばかりの赤ちゃんが最も効率的に英語を習得できると言われています。
しかし、これは保護者が英語を母語として話し、さらに英語圏で生活する場合に限られます。
したがって日本語を母語とする保護者のもと日本で生活している限り、何歳からでも英語を習得することは十分に可能です。
言語発達のピーク「8歳〜10歳」からの英語学習が効率的
脳科学の観点では、何歳からでも英語を習得できますが、年齢に応じて学習方法を変えることが効果的だとされています。
これは、脳の言語習得における発達段階による影響があるためです。
具体的な年齢別のアプローチ方法は、次のように大きく3つに分けられます。
- 乳幼児期:発音やリズムのスムーズな習得が得意
- 児童期:段階を追った計画的な学習が効果的
- 青年期以降:意識的な学習が必要
特に、効率的に英語を学べる時期とされるのが、8歳〜10歳の児童期です。
脳の言語分野が著しく発達するため、英語学習が効果的に進みます。
またこの時期になると、敬語やお世辞、他者を気遣った優しい嘘などを使いこなせるようになり、認知能力や抽象的思考が向上します。
このような発達段階を踏まえ、現在の学習指導要領では、小学校3年生から英語が必修化されています。
習い事から考える|いつから子供に英語を習わせるか
小学5年生から英語の成績がつけられるようになり、子供に習い事として英語を学ばせるべきか悩む保護者も多いことでしょう。
そこで、習い事の観点から、子供の英語教育を始める最適な時期を考えてみました。
母語が話せるようになる「4歳ごろ」がおすすめ
英語の習い事を始めるのに適した時期は、4歳ごろです。
子供が自立心を高め、友達と遊ぶ楽しさを覚え始める時期でもあります。
具体的な発達段階として、次の3つが挙げられます。
- 日本語でのコミュニケーションの基礎が確立
- グループ活動への参加が可能
- 新しい環境への適応力の向上
4歳ごろの子供は、母語である日本語の語彙数が約1,500〜2,000語に達し、他者とコミュニケーションを取りながらグループ活動ができるようになります。
楽しいと感じることに積極的に挑戦しようとする年齢でもあり、英語の習い事を始めるには適しています。
英語耳を育てるなら「0歳~4歳」の耳の成長期
もし「英語耳」を育てたいのであれば、0歳〜4歳ごろに英語に触れさせるのがおすすめです。
英語耳とは、英語の音やイントネーション、リズムを聞き取る能力のことです。
この時期には、耳の機能が急成長し、英語独特の「音」や言葉の「かたまり」、さらにリズムを感じ取りやすい状態になります。
0歳〜4歳ごろに繰り返し受けた音の刺激は、感覚として身につきます。
たとえば英語のLとRの違いやFやHの違いが理解でき、日本人が悩みがちな「発音の違いがわからない」といった苦労を避けられます。
教育者が提唱する|英語教育はいつからやればよいか
2020年度から改定された小学校の学習指導要領では、小学校3年生から英語が「外国語活動」として必修化され、さらに小学校5年生からは「外国語」として正式な科目になりました。
この変更は、日本の英語教育の方向性を定める専門家たちが、10歳〜11歳ごろからの本格的な英語教育を推奨していることを示しています。
メディアでも有名な教育者、林修先生の持論をご紹介します。
林修先生の「10歳まで英語は不要」論:論理的思考の重要性
2017年9月に放送されたTBSの『林先生が驚く初耳学!』で、林修先生は「10歳まで英語教育は必要ない」と発言しました。
その理由は、母語である日本語での論理的思考力の育成が最優先されるべきだと考えているからです。
論理的思考力とは、「きちんと筋道を立てて考えること」を意味します。
例えば、自分の意見を伝える際に、なぜそのように考えるのかを答える能力が求められます。
さまざまな情報を集めて分析し、根拠に基づいて自分なりの結論を出せる力が論理的思考力です。
また、林修先生は「幼児期という限られた期間内で、英語教育の優先順位は低い」とも述べています。
10歳までの子供は、身体的にも心理的にも急速に成長している時期であり、外国語の習得よりも育てるべき能力が多いと主張しています。
子供の早期英語教育で気をつける3つのポイント
一人の教育者が「10歳まで英語教育は必要ない」と発言したところで、その言葉を信じきれないのが親心ですよね。
そこで、早期英語教育で気をつけてほしい3つのポイントをまとめました。
注意点 | 具体例 |
---|---|
①強制的な学習は避ける | 子どもの興味・関心を重視 楽しみながら学べる環境作り 無理のないペース設定 |
②発達段階に応じた学習方法の選択 | 年齢に適した教材の使用 学習時間の適切な配分 個々の理解度への配慮 |
③母語の発達を妨げない | 日本語の習得を優先 バランスの取れた言語教育 文化的アイデンティティの尊重 |
早期英語教育の目的の一つは、子供に英語への親しみを感じてもらうことです。
もし英語に対して嫌なイメージを抱いてしまった場合、その教育は意味がありません。
子供が嫌がる場合は、無理に続けるのではなく潔く中止することをおすすめします。
また、たとえ子供であっても外国語の習得には時間がかかります。
母語が日本語である日本人が英語を習得するには約2,500〜4,000時間が必要だとされています。
英語教育を始めたからといって、すぐに身につくわけではないことを常に意識しておきましょう。
まとめ
本記事では、子供の英語教育を始めるタイミングについて、3つの観点から考察しました。
結論として、「絶対的に正しい開始時期」は存在しないと言えます。
現在でも、各専門家がさまざまな角度から研究を続けているため、明確な答えは出ていません。
しかし、子供の発達段階に着目し、年齢に合ったアプローチを行うことは効果的だと考えられます。
子供の興味や発達状況、家庭環境などを総合的に考慮し、その子に合った時期を選択することが重要です。
早期英語教育にこだわりすぎることなく、子供が楽しみながら学べる環境を提供することが、結果的に英語習得につながるでしょう。